穴澤康弘とゆう人物3/4

さて、3年後、私に転機が訪れました。



以前から交友があった不動産のトップ営業マンから誘いを受けました。現状に満足していた私は断りました。

 

しかし、誘いを受け続ける事1年。次第に不動産というものに惹かれ、不動産業界に行くことを決めました。

結婚相談所の仕事は全く不満がありませんでしたし、むしろ楽しかったです。

 

それでもご縁があって、三鷹の不動産屋に転職しました。ここは、賃貸・売買・リフォームを行う総合不動産会社です。私はそこで賃貸仲介の営業マンとなりました。


はじめての不動産業界には驚かされることばかりでした。

毎朝朝礼での凄まじい声出しをはじめ、自分から聞かないと何も教えてもらえない超体育会系な環境に戸惑いましたが、夢中で働いて気がついたら一人前になっていました。

 


初めての業界でしたが働いているスタッフ、マネージャーなど本当に人間力があり、会社が一丸となっていましたので続けることができたのだと今でも思います。

 


ただし、最初のころはその地域のことがさっぱりわかりません。

 


今でも忘れられない失敗経験があります。カウンターでお客様に物件を勧める際に「この物件周りにコンビニやスーパーが近所にあり、隣人も私が応対した人が住んでいるので安心ですよ!」と接客したところ、お客様は「穴澤さんのおすすめの物件を是非見たい」と言ってくださいました。

 


そこで車で案内することになりました。本当は場所すら知らない物件なので、カーナビの設定をしたところ、すかさずお客様から「場所がわからないんですか?」と質問が飛びます。「会社の決まりなんです」と適当な言い訳をして、ヘンな空気の中、現地へ向かいます。

 

まずいことにナビの案内地に該当の物件が見当たりません。

 

それは旗竿地で物件が少し奥まった場所にあったからなのですが、新人の私はパニック状態になりました。お客様は当然、不審に思い、その物件は成約に至りませんでした。



慣れれば土地勘や住所を見ただけで大体わかるのですが、新人の私には全く通用しませんでした。それから毎日10件以上の物確(物件確認)を行い、近道や裏道、物件をひたすら覚えて3カ月でほぼ網羅しました。

 


それからは同じミスはなく、一気に売り上げに反映するようになりました。


京王線で客付け営業のトップ営業マンとなる


 

三鷹市で2年間勤めた後、中央線エリアから未開拓の京王線沿線に新規出店の立ち上げに携わりました。

 

不動産屋は新規立ち上げをする際、ほとんどが隣の駅などに出店することが多いです。理由としては商圏を被らせることで立ち上げの手間を省くためです。

 

今回は距離はそこまで離れていないものの沿線が違います。頭ではわかっていましたが想像を絶する大変さでした。

 

理由は、そもそも土地勘がないので相場や利便性など何もわかりません。つまりお客様が来店すると、お客様の方が詳しいので恥ずかしい思いをします。

 

また、物件についても何も知らない状態です。営業マンは価格帯によって決めたい物件など、ものすごい数の物件を頭の引き出しに入れていますが、初めてのエリアでは引き出しは空っぽです。一つずつ物件を見る時間があれば良いのですがそうもいきません。

 

そして、最大の苦労ポイントとして客付け会社は管理会社と違って、物件を成約した仲介手数料で成り立っています。

 

当然そのためには物件をネット上に登録して集客をしなければなりません。私がいた店舗では約900件弱の登録をします。

 

つまり、この900件全て写真を撮り、間取り図を作成して、ポータルサイトに掲載するための登録をしなくてはいけないのです。

 

日ごろ外を飛び回ってる営業マンからすると、この登録業務ほど心が折れることはありません。オープン準備は半年前からはじめていましたが、それでも終わる気がしませんでした。

 

しかも記載を間違えてしまったら「誇大広告」になりますし、うっかり賃料を間違えて登録してしまえは営業停止の恐れもあります。つまり、一つのミスも許されないのです。これを乗り越えて始めてオープンする土俵に上がれるわけです。


 

扱っている物件は単身者からファミリーまで、流通している物件は全てです。会社は事務員さんを入れて8人、そのうち営業は5人です。

 

グループ会社全体では、営業マンが1000人以上いて、営業成績は東日本で最高2位までいきました。支店でも全店で1位になり、大きな貢献ができました。

 

アパレル、結婚相談所と畑違いの転職でキャリアもないのに、なぜ営業成績が良かったのか。それは、私が常に「接客」の仕事をしていたからだと思います。

 

アパレルでは紳士服の販売、結婚相談所では婚活アドバイザーと常に人に向き合って仕事をしてきました。また、洋服であれ結婚であれ、人の生活に欠かせない身近なものです(今は生涯独身の人も増えてはいますが・・・)。

 

その観点でいえば、「住まい」も生活に欠かせません。

 

そのような環境の中で、長年接客の仕事を行っており、極めたというとちょっと大げさかもしれませんが、接客には自信があります。

 

とくに結婚相談所では、「人」と「人」とを結びつける仕事をしてきたわけですが、不動産ではそれが「人」と「物件」に代わっただけです。

 

しかも物件は「相手が気に入らない!」など文句を言いません(笑)。

 

それに、婚活で同時に複数と交際することはご法度ですが、物件であれば一人のお客さんに対してたくさん紹介ができます。その人に合ったお部屋を当てはめるだけですから簡単だなと思いました。


ワクワクした気持ちを無くさないために


つづく